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    「さうか、――そんなに何もかも、こつちでして貰つてもえゝか」

    「あゝ、えらかつたなあ」

    「御病人はどちらで?」

    房一は満足げに、かへつて来た犬の頭をかるくたゝいた。

    真黒い顔の男が傍によつて訊いた。

    と、云つた。

    三間つゞきの奥座敷では蝋燭だの燈芯の明りで照し出された仏壇を前に、来客達が思ひ思ひの所にかたまつて坐つていた。

    笹の葉の下から現れたのは頭から尾まで黒々と廻り、全体に円味がつき、所々の鱗が金色に光つていた。

    「さうだ。大したことはない」

    「大石の御老人は見えんやうだな」

    家督を継いだ文太郎が間もなく酒造業をやめた時に、直造は少からず不満だつた。文太郎は種々の理由から説得した。が、最大の理由は法学士だつた文太郎が帳付よりも地方政治に興味を持つていたことにあるらしい。果して、文太郎の濫費のために一時は不動産の大半が銀行担保に入つたことがある。直造は不機嫌だつた。しかし、欧洲大戦が始つて以来の好景気が鍵屋の財政を持ち直しはじめていた。

    「何しに来た?」

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