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彼女はその表情を少しもくづさずにすつと引き下つたが、間もなく帰ると、
だが、急に機嫌をとり直した。そして、徳次が彼の口から聞くことでどんな表情になるかを期待しながら、ゆつくり相手の顔を見て云つた。
と訊くと、遊び友達と河へ行つたといふ返事であつた。
「いや、これから往診に行くところだ」
「ねえ、高間さん。まあ、こつちへお寄んなさい」
犬は横へとびこんだ。だが、匂も嗅がず、草の中から頭を出して、房一の方をしきりと眺めながら同じ方向に歩いている。
むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。
「昨日、君とこの奥さんがバスに乗るところを見かけたが、――」
例の奉祝行列のお終ひに小谷から慰労宴をやらうと云はれたときに、房一は道平が練吉の診察を受けたまゝになつているのを気にかけていたことを思ひ出し、練吉をも加へて小谷と二人を招待しようと云つたのだが、小谷はそれはそれ、これはこれと云つて聞き入れなかつたので、改めて今二人を料亭染田屋に招いたのであつた。
「まあ、――上の町の大石さんとこ位は行つとくのもよからうが」
「やあ」
控へ目に坐つて、注いだ茶碗を盆の上に揃へると、
男はまだ立つて、あの話を持ちかける構へといつた風を持していた。